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>>八雲立つの世界<<
since 99/6/13 -by jakomaru-
 各巻梗概<>(01/05)
 よく解る(保証はない)「八雲立つ」用語の基礎知識<>(01/05)
 主要脇役人物事典<>(01/05)
* 「八雲立つ」(第1巻収録)
【梗概】

都内に住む大学生・七地健生はバイトで出雲へ取材に参加することになった。しかも両親からついでに奉納してくるようにと預かった祖父の形見の飾太刀を持参しての同行である。取材地の維鉄谷村に着いた七地は巫子として奉納舞をする布椎闇己と出会う。闇己は16歳とまだ若年ながら優れた巫覡であり布椎家次期宗主であった。そして、七地達が取材する予定の神和祭は一般の祭りではなく、布椎の宗主が唯人になる重要な神事であるために部外者は邪魔だと脅す。結局、この取材の企画者で劇団主催者の北野をめぐる三角関係の悪化がもとで神和祭前に帰京することに。が、その帰り道でレンタカーのタイヤがパンク。女二人を車に残し、男達はもう一度維鉄谷村へ向かうが祭り見たさに先走る北野を追って七地は禁域に入り神事を目撃してしまう。神事とは次期宗主が現宗主の首を切り落とす儀式だった。自らの手で父を殺した自責の念に駆られ平静を失った闇己は七地を殺そうと追うが、すんでのところで父の言葉を思い出し落ち着きを取り戻す。そして七地に自らの事と遺言に従い維鉄谷の念を昇華すべく7本の神剣と巫覡を捜す決意を話す。その時禁域で結界が破られ、念が吹き出してしまう。パワーの弱まっている神剣「迦具土」では封印は失敗するかも知れない、その時はおれを殺してくれと言う闇己に七地が出来ないと叫んだ時、七地の祖父の形見の剣が共鳴する。二重になった鞘の下から現れたのは神剣「水蛇」だった。この「水蛇」を使い気を憑依させ闇己は結界を張ることに成功し、再び一時の平和を取り戻す。そして七地は自分が鍛冶師ミカチヒコの血統であることを自覚しはじめる。
《ひと言》長い物語の冒頭なのでいまいち説明が多いのは仕方ないでしょう。が、インテリ北野と地元人闇己が作中で解説してくれる「古事記」やその背景は真面目に勉強になります。後半、闇己が神剣振り回すシーンから憑依までのスピード感と迫力はさすがです、樹センセ。

* 「鬼哭の辻」(第2巻収録)

【梗概】叔父・邦生が婿入りしたものの跡取り娘と失踪してしまったと言う経緯の有る老舗料亭「尼辻」。その後継ぎのお披露目のために来た京都で七地は闇己に再会する。しかし、喜ぶ間も無く闇己は七地にまとわりつく霊の存在を指摘する。現に七地は黄色地に蝶の紋様をあしらった着物をきた女性(の霊)を目撃していた。お披露目の席で蝶の紋様の着物が代々女将が着るもの、つまり七地が目撃した女性の霊が叔父と失踪した小夜子であると知る。そしてその夜、小夜子が七地を連れ去ろうと現れる。小夜子は七地を自分が殺した夫の邦生と混同していたのだ。金縛りで声の出ない七地が呼んだ心の声に応えて現れた闇己によって小夜子の魂は昇華することができた。
《ひと言》この第2巻が発行される間に別の連載が入っていた為か微妙に絵が違います。憑依シーンの闇己の絵は絶品です。しかーし神剣探しからは既に脱線してます。が、第1巻で足りなかった闇己と七地の絆とキャラクターが描かれています。無敵の巫覡振りを発揮する闇己が父親の死を思い出す時に見せる脆さに完璧では無い人間味を感じることが出来ます。そしてラストシーンで七地がさらりと言った言葉と仕種は、闇己にとっての七地の存在の重要性を決定付けたであろう。このシーンの為にこの話があったと言っても過言ではない、はず。

a 「若宮祭」(第2巻〜第3巻収録)

【梗概】いよいよ東京に出てきた闇己。その闇己に初対面でプライドを傷つけられた七地の妹・夕香だが、闇己のことが気になって仕方が無い。入れ違いになった闇己を追って七地は闇己の叔父の家を訪ね、そこで闇己の従弟・嵩の手荒い歓迎を受ける。闇己の帰宅で危機は逃れたものの、闇己に対して敵対心を隠さない嵩と闇己は真剣で争うことに。
一方闇己について家まで来たものの、話にはついて行けず、また楽しそうに闇己と話す自分の兄に嫉妬さえ覚え、布椎邸を後にする。その後ろ姿を見送った嵩は夕香に取り憑いている悪霊を見る。後を追った3人は若宮小路で捕まっている夕香を発見するが、悪霊は念へと転化してしまう。気を呼び、夕香を助けるよう闇己は神剣を嵩に渡す。
《ひと言》嵩と夕香の登場で賑やかに。樹先生の作品に出てくる女の子としては夕香はちょっと珍しいタイプですね。大抵は控え目で真面目か、男勝りだったりなので。しかも夕香はメインキャラクターとしてですから尚更。夕香にとっては世界の一大事よりも闇己とデート出来るかどうかの方が重大。でも、そんな彼女の恋の行方がこのストーリーの“少女漫画”部分であり、息抜きかも。

a 「隻眼稲荷」(第3巻収録)

【梗概】神剣「建御雷」の情報を得た闇己と七地はその行方の手懸りを持つ巫女を訪ねるが、その老いた巫女は神剣を不等に扱った己の罪に怯えていた。助けることを条件に売却先を聞き出した矢先、悪霊となった神社の祭神・荒吐神が闇己達を襲う。結界にさえ侵入してくる荒吐神が巫女の「恐怖」によるものと気付くも闇己の体力は限界に来ていた。その時、七地が巫女にもう止めるよう説得にかかる。
《ひと言》七地が巫女に語りかけるシーンに感動して個人的に気に入っている話です。戦後と言う特異な時代を女一人、家族を支えて生き抜くことは想像以上に辛く厳しかったはずで、ましてや50年も許しを願い助けを求めても届かず恐怖にさらされて生きるとはどんな心地か。巫女にとって七地の言葉は本当に救いだったのでしょう。
: 「衣通姫の恋」(第4巻収録)

【梗概】闇己の姉・寧子が上京した。密かに寧子に想いを寄せている七地は嬉しさを隠せない。が、その夜、酔いつぶれて寝ている闇己にキスする寧子を目撃してしまう。七地のショックに追い討ちをかけるかのように寧子は闇己に対する自分の気持ちを告白するのだった。
翌日、傷心の七地に寧子から電話が入る。原宿でレストランを経営している母・世裡に会いに行くのに一緒に来て欲しいと言うのだ。世裡に会った二人は、闇己の父親が“眞前”と言う名の人物であることを知る。寧子を連れ戻しに店まで来た闇己は、世裡の言葉に挑発され憎悪の念を彼女に向けるが、止めに入ったのはまたもや七地だった。一方、寧子に対して世裡は自分と眞前の事を語り、間違った恋を諭すのだった。
《ひと言》第1巻から登場していたものの、その時点から見た目のイメージと口調のギャップが大きかった寧子。今回、胸の内に秘めた激しい想いが発覚したことでキャラクター的にやっと落ち着いたように思います。ただの明るいお嬢様じゃあホントに脇役で終わってしまいますものね。でも、こんな苦しい恋をしてしまった寧子には共感する女の子が多いのでは?そして、母・世裡の登場で早くも布椎家の愛憎劇へ突入か、という急展開な第4巻。
「七人御先」(第4〜5巻収録)
【梗概】どこの学校にも必ずひとつはあると言っても過言ではない怪談話。闇己の通う私立櫻里乃原高校も例外ではなく、冬の新月の午前零時、学校内に七人集まるとその内の一人が災難に遭うという言い伝えがあった。夜中に教科書を取りに学校に戻った闇己と七地兄妹は、その言い伝えを実行しようとしていた闇己のクラスメイト三人に出会う。だが、その言い伝えの元々は集まった七人を殺すまで成仏できない悪霊の伝承だった。折しも生物教室には自殺を図ろうとしていた教師がおり、七人揃った瞬間、悪霊は念と転化し教室は場と化してしまう。
しかし、念を昇華する気を呼ぶためには神剣が必要である。七地が本当に鍛冶師ミカチヒコの血を引く者なら出来ると判断し、闇己はイメージから神剣をつくる“幻刀影術”をやるよう七地に迫る。そして、巫覡修行中の夕香にも気を呼ぶ補助を命じる。
《ひと言》幻刀影術なる高等技をぶっつけ本番で成功させたため、七地がミカチヒコの血統であることが証明され、夕香も現時点ではまだ一人前とは言えないが今後巫覡として活躍することが確定したお話。でも、七地はまったくと言って良いほど自分のしたことの重要性を理解していないようですけどね。
闇己の学校生活の一端が垣間見れるのもかなり貴重と言えるでしょう。
また、闇己のクラスメイトと夕香の会話から察するに、夕香は故意にしろ無意識にしろ同性に敵を作りやすいタイプのようですね。殊に闇己に関する事となると特にその傾向が言動にはっきりくっきり。ま、そこが可愛いのかも。
a 「黒不浄の郷」(第5〜6巻収録)
【梗概】神剣の行方を追って野井辺村を訪れた闇己と七地。山奥にあるその村は近隣からは黒不浄村とも呼ばれていた。買い取りの交渉はほぼまとまったものの、村長の話から闇己たちと同様に神剣を購入しに来た人物が滞在している事を知る。
翌日、七地は村で“キツネ憑き”と呼ばれ蔑まれている美少女・しをりと出会う。しをりの境遇を放っておけない七地は、彼女を一緒に東京に連れて行くと約束する。
同じ頃、闇己の前には神剣を買いに来た人物が現れる。邑見眞前と名乗るその男は、闇己の実の父親であり、布椎海潮の弟であることを告げ、自分と共に来るように強要するが、闇己は隙を突いて辛くも逃げ出す。
一方、最初は利用するつもりで近付いたが次第に七地の優しさに惹かれるようになったしをりは、七地のために神剣を盗み出そうとするが、村長の息子に見つかり、階段から突き落としてしまう。そして、その場に眞前が現れる。
《ひと言》眞前が遂に登場。予想以上にイイ男であります。が、そのあまりにも強烈なキャラクター故に主人公の闇己をはじめ他の登場人物たちも振り回されっ放し。しかも、敵とまでは言わないまでも闇己とは対立する存在であることが確定。競争相手ができれば闇己たちの励み?にもなるでしょう。あわせて謎の多い眞前の目的・行動に今後の展開が期待されます。そして、もう一人のキーパーソンしをり。登場するなり七地と両想い成立か!?と思いきやロミオとジュリエット状態。次に彼女が七地の前に現れる時は敵か味方か。男も女も謎が多い程魅力的ですな。はい。
a 「古代編〈綺羅火〉」(第6巻収録)
【梗概】四世紀初頭、出雲国は中央のヤマトととの関係を強くしようとする東出雲と反ヤマトの色濃い西出雲の二つの勢力に分かれていた。そんな中、東出雲の鍛冶師・甕智彦はヤマトに献上する神剣を打つために出雲族の聖地のある西出雲を訪れるが、着くなり西の刺客の襲撃を受ける。刺客はまだ少年の巫覡だった。
戦の口実が欲しい東出雲の為に西に殺されに来た甕智彦。一族の誇りを示す為にわざと暗殺を失敗し殺されるようにと遣わされた巫覡・真名志。共に死を望まれた者だったが、真名志を生かすため甕智彦は自分を伐つように真名志に神剣を渡す。拒んだ真名志が神剣を己に向けて抜き放った時、聖地の御神体が真名志に宿る。
《ひと言》作者の樹氏が「八雲立つは連載2本分」と以前どこかでコメントしていた記憶があります。古代編は番外編に非ず、もうひとつの「八雲立つ」と考えましょう。くれぐれも真名志=闇己、甕智彦=健生ではないのでご注意。
とは言え、同じ「八雲立つ」でも闇己たちの活躍する科学万歳な現代に比べると、真名志たちの時代では、信仰や迷信が日常生活から政治にまで深く関わっているので「神」にリアリティや人格を感じられるのが面白いです。

a a 「捻れる黒髪」(第6〜7巻収録)

【梗概】学校生活に戻った闇己に除霊の依頼が舞い込む。依頼主は3年の中戸川で、毎夜現われる女の霊を祓って欲しいと言う。しかし、中戸川の家を訪れた闇己と七地の前に現われたのは生霊だった。生霊では神剣を使った昇華は出来ない。生霊の正体を中戸川に想いを寄せている白井と見抜いた闇己は本人に自覚を促すが、白井は思い込みが激しく全く聞き入れない。
そんな中、白井を批難したクラスメイトのヨーコが生霊の犠牲者となってしまう。同様に白井を詰った恵利は、次は自分が狙われると恐れ、闇己に助けを求めるのだった。が、布椎家に逃げ込んだ恵利を白井の生霊が襲う。しかし同時に生霊の邪気に引き寄せられた巨大な「念」までもが姿を現わす。
《ひと言》今回は神剣探しをひと休み。そして、霊は霊でも「生霊」のお話。人の醜悪な部分の塊のような白井の生霊には目を背けたくなるものがあります。でもそれは、誰もが持っている部分で決して無くなるものではないと分かっているからでしょうね。ラストの七地の言葉が心に染みます。
a a 「海神を抱く女」(第7〜8巻収録)
【梗概】瀬戸内海・斎島。そこで行われる神事の祭主を務める事となった闇己は単身その島を訪れた。祭主の役目は「斎女」を選ぶ事。神事を取り仕切る葛岐家の三姉妹、佐那女、安柘、澪胡のうち闇己が選んだのは三女の澪胡だった。喜ぶ澪胡、斎女になる夢破れた佐那女。神事の在り方を快く思わない安柘は、神事の本当の内容と島に生息する「アカクサ」と呼ばれる幻覚作用をもたらす草を闇己に見せ、東京に帰るよう促す。
その頃、闇己を追っていた七地は島へ向かう船で邑見眞前と出会う。眞前に連れられるままに島の一角へと来た七地が見たものは、安柘が闇己にも見せた一面の「アカクサ」だった。その「アカクサ」を「ロハ」と呼び歓喜する眞前。
そこへ澪胡が男と現われるが、痴話喧嘩の末、男は澪胡を絞殺してしまう。しかも、その直後に現われた佐那女は、妹よりも神事か大事だと言い放ち、澪胡をその場に残し立ち去るのだった。
一方、帰る決心をした闇己だったが、葛岐家で「アカクサ」の香により意識を失ってしまう。船着場に現われない闇己を心配する安柘は、佐那女に騙されて崖から海へ突き落とされてしまう。そして、意識のない闇己を祭主に、佐那女を斎女として神事は始まる。
《ひと言》そもそも闇己に祭主の白羽の矢が立たなければ、闇己が澪胡を指名しなければ、こんな悲劇は起きなかったでしょうに。と言ってしまえば身も蓋もないですね(笑)。しかも、美味しいところは全て眞前氏が攫っていき、闇己はいいとこ無し。が、今後物語に深く関わっていくと思われるキャラクターの登場と眞前の言動に多くの伏線を感じます。安柘たちの言葉遣いがテンポ良く楽しい。
a a 「神問い」(第8巻収録)

<>【梗概】西出雲・神門郷(かむどのさと)の首長・加茂呂は英雄「スサノオ」の合意を得る為に須佐郷を目指していた。須佐の首長が認めれば西出雲の王となるのだ。
<>須佐郷に到着したスサノオに真名志による神問いが行われる。真名志に降りた神が見せたのは、血の海と炎。しかしそれは他の者には見えず、スサノオは良き王として認められるのだった。
<>真名志とミカチヒコの関係を探っていたスサノオの従者・スクナは、思いがけずミカチヒコから東出雲王の嫡子ナムチに会うように言われる。西と東との争いを避けるため、そしてそれは全ての人間を憎む真名志を止めるためでもあった。
<>《ひと言》「古事記」「日本書紀」でお馴染みの名前が揃い始め、漸く幕が開いた感。と言っても、過去の文献とは別物と割り切った上で読み比べるのも面白いかも。この辺りの時代を描いた漫画は少ないのでその点もポイント高いと思います。見所はやはり作中の台詞の通り「真名志の見事な神降ろし」でしょう(笑)
a a 「二岐大蛇」(第8-9巻収録)

【梗概】夕香の友人・未紅の様子がおかしい。「最低の男を紹介して」と言うのである。原因を掴むまでの間、蒿が付き合うことになる。未紅のやけくそ振りに驚く蒿だったが、それが宗教にハマり家に帰らない両親を困らせるためだったと知り、両親の説得を手伝うと約束する。
未紅の両親がいる熊野の紀斐神社は布椎の遠縁でもあった。そうと知り行動を起こした闇己たちの前に楠と紀斐神社の宮司の息子・忌部怜司が現れ、未紅の両親のことを快諾したうえに忌部が持つ2本の神剣の返還も条件付きで提示する。
一方、未紅と行動していた蒿は紀斐の関係者らしい少年とケンカになってしまう。彼は忌部怜司の弟、センジだった。
《ひと言》またまた一気に登場人物が増えました。特に忌部兄弟の今後の動向には要注目です。果たして彼らは闇己たちの敵となるのか味方となるのか!?未紅の登場で恋愛面にも新たな動きが。
蒿とセンジのケンカシーンは、元々少女漫画誌に掲載されていたとは思えないスピード感と迫力があります。
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